2025年12月、トランプ米大統領が「日本で見た、とても小さくて本当にキュートなクルマ(軽自動車)を、アメリカでも作って売れるようにする」と発言し、運輸長官に規制見直しを指示した――というニュースが流れました(出所:Bloomberg)。
同じ会見では、バイデン前政権が決めていた「2031年に平均50.4mpg(約21.4km/L)」まで引き上げる燃費基準を、34.5mpg(約14.7km/L)まで緩める方針も示しています(出所:NHTSA:米高速道路交通安全局)。
一言でいえば、
- 燃費規制をゆるめる一方で、軽自動車級の「超小型・低価格車」を解禁する方向
- 「環境よりも、クルマの価格とアメリカ国内の雇用を優先する」政策にシフト
という、大きな政策転換の中で出てきた話です。
この記事では、
- そもそも軽自動車とは何か?(数字で理解)
- なぜトランプ政権は軽自動車に注目したのか?
- どの自動車メーカー・どんな株が「上がりやすい/下がりやすい」のか?
- 40代サラリーマン家庭として、どう家計と投資に生かすべきか?
を、「事実となる数値」と「オリジナル考察」の両方から整理します。
第1章 軽自動車とは?数字で見る「日本のキュートな主役」
1-1. 規格と特徴:660cc・全長3.4mの小さな巨人
軽自動車(Kei car)は、日本独自の「小型車」区分で、道路運送車両法で次のように定義されています(出所:国土交通省「自動車の種類」)。
- 排気量:660cc以下
- 全長:3.4m以下
- 全幅:1.48m以下
- 全高:2.0m以下
その代わりに、
- 自動車税が普通車より安い
- 自動車重量税も優遇
- 任意保険料も比較的安い
- 駐車場要件が緩い自治体も多い
など、維持費が圧倒的に安いのが最大の魅力です。
40代の私たち世代でも、
- 「セカンドカーは軽」
- 「子どもの送り迎え用は軽」
- 「地方転勤用にとりあえず軽」
という使い方をしている家庭は多いですよね。
1-2. 販売台数:日本では「ほぼ4割」が軽
2024年の日本の新車販売は約442万台で、前年比▲7.5%と減少しました(出所:Provide Cars「2024年度の車両登録台数」)。
そのうち軽自動車は市場全体の約38%を占め、台数ベースでは約170万台規模です(2023年はシェア40%)(出所:Inovev「Japan Passenger Car Market」)。
ざっくり計算すると、
- 442万台 × 38% ≒ 約170万台が軽自動車
となり、
「日本で売れている新車のおよそ3台に1台〜4台に1台は軽自動車」
というレベル感です。

(図1は、2019〜2024年の新車販売台数と軽シェアをプロットしたもの。2019年の総販売台数約520万台、2024年約442万台、その間も軽は3~4割を維持している様子が分かります)
1-3. 誰が作っているのか?メーカー別の構図
2024年のメーカー別販売台数は以下の通りです(出所:Provide Cars)。
- トヨタ:135.6万台(シェア約31%)
- スズキ:72.2万台
- ホンダ:66.8万台
- 日産:47.6万台
- ダイハツ:36.7万台(不正問題で▲38%)
特に軽自動車に強いのは、
- スズキ
- ダイハツ(トヨタグループ)
- ホンダ(N-BOXなど)
- 日産(サクラなどEV軽)
といった顔ぶれです。
つまり、トランプ氏が「キュート」と言った軽自動車が米国で解禁されると、日本のこれらメーカーにとっては「新しい輸出・現地生産のチャンス」になり得るわけです。
第2章 アメリカ側の事情:巨大SUV王国と高すぎる新車価格
2-1. 米国の新車販売の実態
一方でアメリカ。
2024年の米国新車販売は約1,609万台と、前年から約3%増えています(出所:Cox Automotive)。
そのうちSUVとピックアップトラックが全体の75%を占めるまでになっており、
- 10台売れたら、7〜8台はSUVかピックアップ
- いわゆる「普通のセダン」は完全に少数派
という、デカい車が正義の世界です。
2-2. 新車価格は平均約4.9万ドル、約760万円
Kelley Blue Book のデータによると、2024年12月時点のアメリカの新車平均取引価格は49,740ドルでした(出所:Kelley Blue Book)。
1ドル=155円でざっくり計算すると、
49,740ドル × 155円 ≒ 約770万円
日本の感覚からすると、
「平均でレクサスや高級ミニバン級の値段」という世界です。
さらにCox Automotiveのデータでは、2025年9月の平均取引価格が50,080ドルと、初めて5万ドルを突破したと報告されています(出所:MTS Insights / Cox Automotive)。

なぜここまで高くなったかというと、
- 大型SUV・ピックアップなど、車体が大きく素材コストが高い車が主流
- EV・ハイブリッドなど、高価な電池やモーターを搭載した車種が増えている
- コロナ以降の供給制約・半導体不足で、安いグレードが減り、高価格帯中心に推移
といった要因が指摘されています。
つまり今の米国は、
「クルマが欲しいけど、とにかく高くて買えない人」が大量にいる市場
と言えます。
2-3. そこに軽自動車解禁が刺さる理由
トランプ政権は、
- 燃費規制を緩める(50.4mpg → 34.5mpg)
- EVクレジット(最大7,500ドルの補助)を停止・縮小する方向
- そのうえで、「もっと安い小型車を作っていいよ」と軽自動車に道を開く
という動きを見せています(出所:NHTSA、ホワイトハウス公式発表)。
この組み合わせを一言でまとめると、
「環境性能より、車体価格と国内雇用を優先する『庶民派アピール』」
と言うことができます。
- 高額EVが買えない層には「安いガソリン車+軽ベース車」を用意
- 自動車メーカーには「燃費規制の縛りを緩めるから、米国内でたくさん作って雇用を増やしてくれ」とメッセージ
という構図が見えてきます。
第3章 日本メーカー目線:誰が有利で誰が微妙か
3-1. 有利になりやすい日本メーカー
数値・事業構造から見て、今回の「軽解禁」でポジティブになりやすいのは以下のメーカーです。
スズキ・ダイハツ(トヨタグループ)
- 日本の軽マーケットを長年リード
- 軽自動車をベースにした小型SUV・クロスオーバーのノウハウが豊富
- ダイハツは2024年に不正問題で日本販売が▲38%と大打撃
→ 国内で余裕ができた生産キャパや技術を、北米向けに転用しやすい可能性があります。
ホンダ・日産
- ホンダN-BOXは日本の軽乗用車販売トップクラス
- 日産はEV軽「サクラ」を展開(2024年の販売は約2.3万台)
→ 既存の軽プラットフォーム+EV技術をうまく北米向けにアレンジできれば、再成長のチャンスにもなり得ます。
トヨタ
- 直接の軽ブランドは持たないものの、ダイハツを抱える巨大グループ
- 2024年の日本販売は約135.6万台と圧倒的首位(出所:Provide Cars)
→ 「トヨタバッジの“準軽”」という形で、北米向けに税制・安全基準に合わせた小型ハッチバック/ミニSUVを投入するシナリオも考えられます。
3-2. 苦しくなりやすいプレイヤー
逆に、やや逆風になりそうなのが、
- 高価格EVを中心に展開してきたメーカー
- 大型SUV・フルサイズピックアップ依存度が極端に高いメーカー
です。
燃費規制が緩んでしまうと、
- 「燃費の良さ」「環境性能」だけを武器にしたEVの優位性が薄れる
- 巨大ピックアップや大排気量SUVも作りやすくなる
ため、EVメーカーの株価にはマイナス要因として織り込まれる可能性があります。
第4章 株式市場目線:どこが「上がりやすい/下がりやすい」のか?
※以下はあくまで「可能性」の話であり、特定銘柄の推奨ではありません。
4-1. 上昇が期待されやすいセクター・銘柄イメージ
- 軽自動車比率の高い日本メーカー
- スズキ、ホンダ、日産、トヨタ(+ダイハツ)など
- 「米国向け小型車・軽ベース車」への期待感で、中長期的な成長ストーリーが描きやすい
- 軽向け部品メーカー・サプライヤー
- コンパクト車用エンジン、トランスミッション、軽量ボディ部材
- 日本の軽ノウハウを持つサプライヤーは、北米現地生産のパートナーとして需要増が見込まれる
- 低価格EV/ハイブリッドを持つアジア勢
- ガソリン高や都市部環境規制から「安いエコカー」ニーズは残る
- 軽規格+マイルドハイブリッド、軽EVなど、“なんちゃってEV”でも十分にニーズがとれる
4-2. 下落が意識されやすいセクター・銘柄イメージ
- 高価格EV依存のメーカー・関連銘柄
- EV補助金カットや燃費規制緩和により、「EVだけ作っていれば勝ち組」という構図が崩れる
- フルサイズSUV/ピックアップの高利益依存モデルが多いメーカー
- 一見すると燃費規制緩和で追い風に見えるが、軽や小型車が増えると「高利益商品だけではシェア維持が難しい」局面も
- 環境規制強化を前提に成長してきた“グリーン関連”一部銘柄
- クレジット取引や燃費規制に絡むビジネスは、規制変更でスキーム自体が変わるリスクがある
第5章 5年後を見据えた「オリジナル将来予測」
5-1. 5年以内に「軽そのもの」が米国で大ブームになるか?
正直に言うと、“日本式の軽自動車そのもの”がアメリカで大ブレイクする可能性は高くないと考えます。
理由はシンプルで、
- すでに新車市場の75%がSUV/ピックアップ
- 一戸建て+広い駐車場が前提のライフスタイル
- 高速道路・長距離移動が前提の交通インフラ
という文化の中で、
「安全性・パワー面で見劣りする超小型車を、どこまで受け入れられるか?」
という壁があるからです。
5-2. それでも「日本メーカーにはチャンス」がある理由
とはいえ、まったく売れないわけではないと思います。
- 都市部の若者・低所得層向けの“シティカー”
- 配達用・カーシェア用など、フリート需要
- 小型EV・マイルドHVとしての利用
など、「ニッチだけど確実なニーズ」がある領域では、日本の軽技術+EV/HV技術は非常に相性が良いからです。
また、日本の自動車産業はGDPの約2.9%、製造業GDPの13.9%を占め、約558万人(就業者の8.3%)を雇用している巨大産業です(出所:日本自動車工業会「自動車産業の現状」)。
アメリカと日本の政治関係・通商交渉を考えると、
「日本のメーカーが軽ないし“準軽”を米国で現地生産し、アメリカ人の雇用を生みつつ、日本の部品産業も潤う」
というWin-Winな落としどころが模索される可能性は高いと見ています。
5-3. 我々40代が意識すべきシナリオ
5年〜10年スパンで考えると、
- 日本メーカー:北米での「小型・低価格車の再拡大」
- 米国市場:大型車偏重から、多少は「小型車への揺り戻し」
- EV市場:高級EV一辺倒 → 「安いシティEV+ハイブリッド」の比重アップ
という方向に、じわじわシフトしていく可能性があります。
第6章 40代サラリーマン家庭は、このニュースをどう生かすべきか?
6-1. 「クルマはなるべく小さく・安く」が世界標準になるかも
アメリカですら、
- 新車平均価格が約770万円まで高騰
- 燃費規制緩和の理由が「庶民が車を買えないから」という状況
ということは、クルマにお金をかけすぎるリスクは世界共通です。
日本の40代サラリーマン家庭としては、
- 「見栄の大排気量SUV」ではなく、必要十分なコンパクトカー+軽
- 車体価格+維持費を年収の○%までといったマイルールを決める
- 浮いたお金をNISA・iDeCo・持株会などの資産形成に回す
という、超・堅実戦略が結果的に世界トレンドに合ってくる可能性もあります。
6-2. 投資面でのアクション例(あくまで一例)
具体的な銘柄名は控えますが、考え方のフレームとしてはこんなイメージです。
- 「国策×構造変化」を意識して、日本自動車株をウォッチ
- 軽・小型車に強いメーカー
- 北米に強い販売ネットワークを持つメーカー
- EV一本足ではなく、HV・ガソリンもバランス良いメーカー
- 部品メーカー・サプライヤーまで視野を広げる
- 軽向け・小型車向けの部品
- 軽量化素材、コンパクトEV用バッテリー・モーターなど
- 自動車セクター+テーマ投資で“賭けすぎ”を防ぐ
- 自動車セクターは景気敏感&政策リスクも大きい
- 40代からは「一点集中」ではなく、全世界株インデックス+テーマ枠(10〜20%)程度に抑えるのが現実的
6-3. 日々の家計でできること
投資以前に、日々の家計でできることも多いです。
- 今乗っているクルマの車の固定費(ガソリン・保険・駐車場・車検)を見える化する
- 「軽+カーシェア」の組み合わせで、車2台持ちを1.5台分のコスト感にする
- 5年後の買い替え候補に、軽EV・軽ハイブリッドも選択肢として入れておく

例えば、「車に毎月5万円かけて投資ゼロ」のケースと、「車コストを3万円に抑えて毎月2万円を20年間投資する」ケースを比べると、
- 年率3%で運用できれば約656万円
- 年率5%なら約822万円
の資産になる計算です(利回りは仮定であり将来成果を保証しません)。
クルマのグレードを少し落とすだけで、老後資金や教育資金の大きなタネ銭を作れるイメージがつかめると思います。
おわりに:ニュースを「ネタ」で終わらせない
「トランプ氏が“キュートな軽をアメリカでも作る”と言い出した」だけを見ると、単なるネタニュースに見えますが、背景には、
- アメリカの高すぎる新車価格問題
- 燃費規制とEV政策の大転換
- 日本の軽自動車技術が、再び世界で注目されつつある流れ
という、かなり大きなトレンドが隠れています。
40代サラリーマン家庭としては、
- クルマにかけるお金を、これ以上増やさない
- 浮いたお金を、長期の資産形成(NISA・iDeCo・インデックス投資)に回す
- ニュースを「単なる話題」ではなく、自分の家計・投資戦略を見直すきっかけにする
この3つを意識するだけでも、5年・10年後の資産額は大きく変わってきます。
トランプ氏の「キュートな軽」の一言を、ぜひご自身の家計と資産形成を見直す入口として活用してみてください。
【免責事項】
本記事は、公開されている統計データ・報道をもとにした一般的な情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。また、将来の市場動向・株価を保証するものではありません。


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