「EVが普及して、石油の時代は終わる」と何度も聞いてきたのに、ゴールドマン・サックスは「世界の石油需要は2040年まで増え続ける」というレポートを出しました(出所:Reuters)。
もし本当にそうなるなら、
- ガソリン代・電気料金はどうなるのか
- インフレや金利、住宅ローンへの影響は
- 石油株・エネルギー株はまだ投資対象になるのか
といった疑問が、40代サラリーマンの家計にもじわじわ効いてきます。
この記事では、ニュースの要点と背景をできるだけかみ砕いて解説しつつ、
- なぜ今、このニュースが騒がれているのか
- どんな株・セクターに追い風/向かい風が吹きそうか
- 40代家庭が今日から取れる現実的な対策
まで、一本で読めるようにまとめました。
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
1.ニュースの概要:ゴールドマンは何と言っているのか
- 世界の石油需要は2024年の日量約1億350万バレルから、2040年には1億1,300万バレルまで増えると予測
- 2025~2030年は年平均+90万バレル/日、その後2040年までは+10万バレル/日と伸びが鈍化
- ジェット燃料・石油化学製品は代替が難しく、需要が残り続けると分析
- AI・データセンターを中心とする経済成長が、間接的に日量300万バレル分の需要押し上げ要因になると試算
- 一方で、低炭素技術の急速な進展や景気後退は下振れリスクと指摘
要するに、
「EVや再エネが広がっても、2040年までは石油需要は減らないどころか、まだ増える」
というのがゴールドマンの見立てです(出所:Reuters)。
IEAやOPECとの違い:見通しはけっこう割れている
一方、国際エネルギー機関(IEA)や産油国側のOPECは、少し違う絵を描いています。
- IEA「World Energy Outlook 2024」:
化石燃料全体の需要は2030年前後にピークに達し、その後は横ばい~微減になるシナリオを提示(出所:IEA World Energy Outlook 2024)。 - IEA「Oil 2023」:
石油需要は2030年ごろに日量約1億500万バレルで頭打ちになると見込む(出所:IEA Oil 2023)。 - OPEC「World Oil Outlook 2025」:
逆に、2050年でも世界の石油需要は日量1億2,000万バレル超と、長期的な増加を見込む(出所:OPEC World Oil Outlook 2025)。
まとめると、
- IEA:2030年前後にピーク → その後は横ばい~減少
- ゴールドマン:伸びは鈍るが、2040年まで増加が続く
- OPEC:2050年も今より多い需要を想定
という形で、そもそも「いつピークを迎えるのか」について、かなり幅があるのが現状です。
2.なぜこのニュースで市場が騒ぐのか
2-1.「脱炭素なのに石油増加」というギャップ
ここ数年、ニュースでは
- 2050年カーボンニュートラル
- 2035年には新車販売はEV中心に
- 石炭火力の段階的廃止
といったキーワードが並び、「化石燃料=終わりつつあるもの」という空気が強くなっていました。
しかし、ゴールドマンのように「いやいや、現実には2040年まで増えますよ」という見方が出てくると、
- 各国の脱炭素目標は本当に達成できるのか
- 将来、炭素税や規制がもっと急に厳しくなるのでは
- 化石燃料への投資をやめるのはまだ早いのでは
といった疑問が一気に噴き出します。
この「政策と現実のギャップ」が大きいほど、投資家にとってはチャンスにもリスクにもなるため、ニュースとして大きく扱われるわけです。
2-2.産油国と石油メジャーの投資判断に直結する
石油ビジネスは、見つけて掘ればすぐ売れるわけではありません。
- 探鉱 → 開発 → 生産まで、通常10年単位
- 投資額はひとつの巨大プロジェクトで数千億~数兆円規模
もし、
- 「2030年に需要ピーク」なら、今から大型投資をしても回収前に需要減少・価格下落に巻き込まれるリスク
- 「2040年まで増加」なら、まだ長期投資をしてもペイする可能性が高い
と判断が変わり、産油国やメジャー(エクソンモービル、シェブロン、サウジアラムコなど)の投資計画に大きく影響します。
投資が増えれば
- オイルサービス企業(掘削やプラント建設)に仕事が増える
- 将来の供給も増えるので、原油価格の急騰リスクはやや抑えられる
逆に投資が不足すれば、
- 何かのきっかけで供給不足 → 原油高騰
- ガソリン・航空燃料・電気料金まで値上がり
という形で、私たちの家計にも跳ね返ってきます。
2-3.AI・データセンターがエネルギー需要を押し上げる
ゴールドマンのレポートが注目されたもう一つの理由が、AIとエネルギーの関係です。
AIの学習や推論には莫大な電力を使います。ゴールドマンは、2030年までにデータセンターの電力需要が現在の約1.6倍になると試算しており(出所:Goldman Sachs Insights)、その結果、電力全体・エネルギー全体の需要も押し上げられると見ています。
電力は、国や地域によって
- 再エネ(太陽光・風力)
- 原子力
- ガス火力・石炭火力・石油火力
などで生み出されます。AIブームがもたらす電力需要増加は、最終的に石油・ガスなどの需要も間接的に増やす可能性がある、というのが今回のポイントです。
3.「分かりやすく」石油需要の中身を整理してみる
3-1.石油はどこで使われているのか
ざっくり言うと、原油の使い道は次のように分かれます。
- ガソリン・軽油:自動車・トラックなどの燃料
- ジェット燃料:航空機の燃料
- ナフサ:プラスチックや合成繊維など、石油化学製品の原料
- 重油:船舶燃料・一部の発電など
EVの普及で置き換えやすいのは、主に「ガソリン・軽油」です。
逆に、
- 長距離国際線のジェット燃料
- プラスチックの原料となるナフサ
などは、現時点で完全な代替が難しく、「ここは当面石油が必要」と見られている分野です。
ゴールドマンが「2040年まで需要が増える」と言っているのは、まさにこの「代替困難な分野の成長」を重く見ているからです(出所:Reuters)。
3-2.「増えるけど、伸びは鈍化」というイメージ
今回の見通しをグラフにすると、次のようなイメージです。
- 2020年代後半:新興国の経済成長+航空需要の回復で、年+90万バレル/日前後の比較的力強い増加
- 2030年代:EVや省エネの普及でガソリン需要はピークアウトし、伸びは年+10万バレル/日程度まで鈍化
- それでも、完全な減少トレンドには入らず、2040年までジリジリと増える
つまり、「右肩上がりの角度は小さくなるが、ゼロにはならない」というイメージです。
4.40代サラリーマンの家計にはどう効いてくる?
4-1.ガソリン代・電気代は「下がり切らない」前提で
世界の石油需要が高止まりするなら、原油価格はざっくり言えば「暴落しにくく、上がるときは一気に上がる」性質を維持しやすくなります。
その影響は家計のあちこちに出てきます。
- ガソリン代:マイカー通勤・送迎がある家庭は、毎月の固定費として無視できない
- 電気料金:火力発電の燃料コストが電気料金に転嫁される国では、原油・LNG価格と連動しやすい
- 物流コスト:食品・日用品・ネット通販の配送料にじわじわ反映
「昔はレギュラー100円台前半の時期もあったのに…」という感覚のまま生活設計をすると、今後の物価上昇に耐えきれなくなるリスクがあります。
むしろ、
「ガソリン代・電気代は、基本的に高止まりするもの」
と割り切り、そのうえで家計全体をどう組み立てるかを考える方が現実的です。
4-2.インフレと金利:住宅ローンにもじわじわ波及
石油価格の上昇はインフレ率を押し上げ、各国の中央銀行は金利を高めに維持せざるを得なくなります。
- エネルギー価格上昇 → 企業コスト増 → 価格転嫁 → 消費者物価上昇
- インフレ高止まり → 金利を下げにくい → 住宅ローン金利も上がりやすい
日本も、これまでの超低金利から少しずつ正常化の方向に動き始めており、「今後数十年、ずっと0.5%以下」という前提は危うくなっています。
40代で住宅ローンを抱えている場合、
- これ以上金利が上がっても返済が回るか
- 繰上返済・借り換え・固定金利への切替などをどう使うか
といった視点で、ローン全体を見直しておくと安心です。
4-3.家計でできる現実的な対策
石油価格そのものはコントロールできませんが、「家計に効いてくる部分」はある程度コントロールできます。例えば、
- 車の使い方を見直す(2台持ち→1台、カーシェア活用、通勤交通手段の変更など)
- 電力会社・料金プランの比較、再エネ割引や時間帯別プランの活用
- 古いエアコン・冷蔵庫を省エネタイプへ更新し、電気代を中長期で削減
- ふるさと納税でトイレットペーパー・洗剤・米などの「生活必需品系」を選び、物価上昇分を相殺
どれも派手な手法ではありませんが、「毎月5,000円の固定費削減」が10年続けば、合計60万円の効果です。
原油や為替を当てるより、こちらの方がよほど確実で再現性が高い対策と言えます。
5.株式市場への影響:上がりやすい/下がりやすいセクター
ここからは、今回の「2040年まで石油需要増」シナリオが、どんな株・セクターにプラス/マイナスに働きそうかを整理します。
あくまで一般論であり、特定銘柄の推奨ではない点にご注意ください。
5-1.追い風が吹きやすいセクター
統合型石油メジャー・大手エネルギー企業
エクソンモービルやシェブロン、欧州のBP・シェルなど、上流(探鉱・生産)から下流(精製・販売)まで手がける大手は、
- 中長期的な石油需要の底堅さ
- 高配当・自社株買いによる株主還元
- 再エネ・低炭素事業への投資余力
という3点で注目されやすくなります(出所:BP Energy Outlook)。
日本株では、
- INPEX(国際石油開発帝石)
- JAPEX(石油資源開発)
- ENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングスなどの国内エネルギー企業
が、原油価格の影響を比較的受けやすい代表例です。
オイルサービス・エネルギーインフラ企業
石油会社が開発投資を増やせば、その設備工事・掘削・メンテナンスを担うオイルサービス企業の需要も増えます。
- 油田開発に関連するプラントメーカー・エンジニアリング企業
- パイプライン・貯蔵施設・港湾インフラを運営する企業
などが、長期投資サイクルの恩恵を受けやすいセクターです。
省エネ・再エネ関連も「逆説的に」追い風
石油需要がなかなか減らないということは、温暖化対策の観点からは、将来より厳しい規制や炭素価格の上昇が必要になる可能性も意味します。
そのとき、恩恵を受けやすいのが、
- 太陽光・風力などの再エネ発電事業者
- 蓄電池関連、送配電インフラの高度化
- 省エネ機器、断熱材、エネルギーマネジメントシステムなど
です。
「石油がしぶとく残る → 温暖化対策はもっと急がないといけない → 再エネ・省エネ投資が増える」という、少し皮肉な構図も同時に進んでいくと考えられます。
5-2.逆風を受けやすいセクター
燃料コストを価格に転嫁しにくい業種
エネルギー価格が上がると、
- 外食チェーン
- 低価格帯の小売や物流業者
- LCC(格安航空会社)など
のように「値上げするとお客さんがすぐ離れてしまうビジネス」は、コスト増を価格に転嫁しにくく、利益が削られやすくなります。
エネルギー多消費型で競争力が弱い製造業
鉄鋼・紙パルプ・一部の化学など、電力・燃料コスト比率が高い業種では、
- エネルギーコストの上昇 → 生産コスト上昇
- 海外企業との価格競争で不利になりやすい
というリスクが高まります。
同じ業種でも、省エネ投資を進めている企業とそうでない企業で、差がつきやすくなる領域です。
5-3.インデックス投資家はどう考えればいい?
オルカンやS&P500などのインデックスに積み立て投資をしている場合、
- エネルギー企業・再エネ企業はすでに「世界市場の比率」に応じて組み込まれている
- 今回のような見通しの修正は、指数の中で自然に「勝ち組・負け組」を選別していく
という仕組みになっています。
個別株を触らない投資家にとっては、
- ニュースを見て「世界経済の背景」を理解しておく
- その上で、自分のリスク許容度に合ったアセットアロケーションを守る
ことが、一番現実的で再現性の高いスタンスです。
6.40代サラリーマンが今日からできる3つの行動
6-1.家計の「エネルギー依存度」を見える化する
まずは、家計簿アプリやエクセルで、
- ガソリン・駐車場・自動車関連費
- 電気・ガス・灯油などの光熱費
- 旅行・帰省にかかる交通費(飛行機・新幹線など)
を半年~1年分ピックアップし、「年間いくらエネルギーに払っているか」をざっくり把握してみるのがおすすめです。
そのうえで、
- 自動車:距離・台数・車種を見直せないか
- 光熱費:プラン変更、省エネ家電、断熱で下げられないか
- 旅行:ピーク時期を外す、マイル・ポイントを活用する余地はないか
といった「現実的な削減策」を検討します。
6-2.固定費3万円削減を一つの目安にする
エネルギー関連だけにこだわらず、
- 通信費(スマホプラン・光回線)
- 保険(必要以上の掛け捨て・貯蓄型保険)
- 使っていないサブスク
も含めて、月3万円の固定費削減を目標にするのも有効です。
月3万円の削減ができれば、年間36万円、10年で360万円。
インフレやエネルギー高にびくびくするより、「自分で作れる余裕」を増やした方が、精神的にもラクになります。
6-3.投資は「世界経済+少しのスパイス」で考える
投資では、
- まずはオルカン・S&P500などのインデックスを軸に、長期積立
- エネルギーや再エネに関心がある場合、ポートフォリオの一部(例:全体の5~10%)をテーマ枠として使う
くらいのバランスが、40代サラリーマンにはちょうど良いと感じます。
世界のエネルギーミックスは、
- 石油・ガスがしぶとく残りつつ
- 再エネ・省エネへの投資も加速
という「両方進む」形になります。
どちらか一方に全賭けするのではなく、「どんな展開になってもそこそこついていける形」を作るのがポイントです。
7.まとめ:脱炭素と石油増加、矛盾に見えて両立する世界
ゴールドマン・サックスは、
- 世界の石油需要は2040年まで増加が続き
- AI・デジタル化の進展も、その一部を後押しする
という見通しを示しました(出所:Reuters)。
一方で、IEAは「2030年前後に化石燃料需要はピーク」とみており、国際機関や産油国のあいだでも見方は割れています(出所:IEA World Energy Outlook 2024)。
このギャップが意味しているのは、
- 石油がすぐに「ゼロ」になる世界ではない
- 同時に、脱炭素の流れも止まらない
という、少し矛盾した現実です。
40代サラリーマンとしては、
- ガソリン・電気代が下がり切らない前提で、家計の固定費を整える
- 投資は世界分散を土台にしつつ、エネルギー・再エネを「少しのスパイス」として扱う
- 働き方や転職でも、エネルギーコストに強い企業かどうかを一つの視点にする
といった「現実的な行動」に落とし込むのが、いちばん再現性の高い対応だと思います。
ニュースをただ眺めて不安になるのではなく、「自分の家計と人生にどう翻訳するか」という視点で、一つずつ整えていきましょう。
本記事は、各種公的資料・報道を参考に筆者がまとめた一般的な情報提供であり、将来の価格・需要・株価を保証するものではありません。特定の金融商品・銘柄の売買を推奨する意図はなく、投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。


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